スタジオ、5つほどみつくろって
ルート配送のように毎日まわる
死ぬほどやったつもりの受験英語、まったく使い物にならない英会話
ファーストフードでコーヒーと頼むと、かなりの確立でばかでかいコーラ
門をたたいて、必死に書いた手紙を手渡す
「ha,ha,ha,,,,, I can’t」
そこを何とかといいたいところだが、あとが続かない
そんなこんなを5つのスタジオに1週間やってみた
顔見知りになれたのは、スタジオのそばに住みつく浮浪者
人生、うまくいかないものねと親近感
たばこをあげる
ぼくは途方にくれた
全部忘れて、しばし旅に出るか
おばちゃん、さようなら
目指すはニューヨーク
アメリカにやってきたのだ、自由の女神を見なければ
1日車を走らせた
地図ではニューヨークまで30cm
どれくらい進んだのだろうと現在地、2cm
なめていた、アメリカってでかい
寝場所は慎重に選ばねば、車の中とはいえ無防備だ
たまに出てくるフリーウェイのパーキングエリアでぼくは寝る
何かあればトラックの運ちゃんが助けてくれるはず
話しかけてきたのは、白人のデブなおっちゃん
「どうだい?」
「いやいや、ぼくにはとても無理だよ」
「大丈夫だよ、おれのはそんなにでかくない」
「そうでなくて」
「きみの口でもじゅうぶんだ」
「そうでなくて」
語学力のなさがこんな会話になってしまった
さんざん追いまわされる
一週間もすると、髪はパサパサ、不精ひげ、下着もかえてねーや
ぼくも浮浪者の仲間入り、誰も近づかなくなった
10日目に、やっと着いたニューヨーク
なにやら殺気のみなぎるニューヨーク
ブロンクスとはつゆ知らず
殺される、ここにいては殺されると日が暮れていく
ガソリンわずかといえども、スタンドには怪しい影がうようよ
なにが自由だ自由の女神
退散
日が昇っても、ニューヨークに入る気は起こらない
帰路に着く
帰ってきたロサンゼルス、故郷に戻った気分
おばちゃん風呂貸してくれないか、そしてさようなら
何を得たのだろうアメリカで
帰らねば日本に
地道にやりますと師匠に頭を下げた