カーペンターズ

オトンは休みの日となると、ぼくを自転車の後ろに乗せて図書館に行った
ぼくは分厚い本に興味はなく、図書館で何を借りるでもなく、オトンにひっついていた
帰りにジャスコに寄り道し、ラーメンを食べるのを楽しみにひっついていた
どんな本をオトンは好んだのかいまだにわからないけれど、オトンは本が好きだったようで

ぼくも自転車が乗れるようになると、オトンの後ろを列なってペダルをこいだ
ぼくの住む町も開発が進み、交通量も増えた、国道の路肩ぎりぎりまで追いやられる
がに股で自転車をこぐオトンを後ろから追いかけながら、オトンが田んぼに落ちはしないかと
オカンの口癖を真に受けている、オトンはどんくさいのだ

オトンは車を手に入れた、かなりポンコツの白いブルーバード
寒い日には10分ほど暖気しないとまともに動いてはくれない
ポンコツの車とどんくさいオトンのペアはオカンのヒステリーに拍車をかけていた

ポンコツにもカーステレオはついていた
カーペンターズとノーランズとペトロカプリシャス
3本のカセットテープがヘビーローテーションでかかる
たまに風変わりな曲が流れると、それはジンギスカン
オトンの運転は軽快になる

車はアコードに変わってカーステもピカピカ光っているというのに、いつまでたってもこの3本
ぼくがビートルズに目覚めて車に持ちこむまで、いつまでたってもこの3本
そして、たまにジンギスカン

今日はピアノの弾き語りを録音した、カーペンターズ
意識して聴いたことがないカーペンターズも
ぼくの体に染み付いている

どんくさいオトンとカーペンターズ
ぼくとオトンは車にのってトップ オブ ザ ワールドへ
ジャスコのラーメンはこの上なく幸せになれた

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