歯医者

半年前からすると、ずいぶんと穴は広がって
食べ物が詰まると気になるぐらいで、別に痛みは無いのだけれども
昨年もそんな調子で、いよいよ氷山の一角もなくなってしまうと
出向いたときには渋い顔をされて、そんなところいらねぇやと抜いてしまった

今回は、このまま見殺しにするわけにもいかない
こんな具合だとじじぃになったときに何本生き残ってることやらと
仕方なく歯医者に出向く

近所の歯医者はいつも予約でいっぱいで
ふらりとやって来る客ははなはだ迷惑そうだ
本も持ってきたし、時間だってたっぷりあると
相当待ちますよと、たいそうな口ぶりも気にせず居座って
入れ替わり立ち代りやって来る客
定員は決まっているかのように減りもせず増えもせず
親子連れと、おばさんに、またおばさんと似たような顔ぶれ
ガキどもはうるさくて、必ず兄弟でやってきて

いよいよ本が読み終わろうかというときにぼくの名前は呼ばれて
仰々しい椅子に、ドリルの刃で囲まれて、緊張してきた

たいていのものは自力で直すのがぼくのポリシー
車だってほとんど自分で治すのだ
今度、歯のマニュアルを買ってみようかと
直し方がわかったところで、自分の歯なんて見えやしない
工具も結構な値段だろうと考えているうちに
ガリガリとほじられて、汗が出てきた
神経すれすれのとこをやられているようで
こんなもので神経ぐさりとやられたら飛び上がるだろうと、汗が出てきた

「虫歯、ほじってるところ、見たいですか」と言われた
大口開けて、手をつこっまれてしゃべれないので首を振る
興味津々なくせに、大人な冷静さ

「こんなに大きな虫歯なのに」と
少しがっかりして、またほじり始める

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