連なり

ぼくの後ろにはぼくがいて
その後ろにもぼくはいて
ドミノのようにぼくが連なっている

少し歩いてみることにした、うしろのほうに
見慣れたぼくの顔がずらりと並び
そろそろ飽きてきたところにやっぱり分岐点は残っていて
そこのぼくは突然ネクタイなんか締めていて

この頃のぼくは、早起きして電車に揺られて
夕方には仕事を終えて、土日はきっちり休んで
まっとうなサラリーマンになってやろうと
何でこんなにへとへとな毎日と、音楽業界にうんざりしていた

面接の日の朝、慣れないネクタイに
自分のスーツ姿を鏡に映してみる
この姿がずっと連なる長いドミノの先頭に
じっと鏡をにらみつけて
そのうちに日は暮れた

分岐点、スーツ姿のぼくの連なりもずいぶんと先まで伸びている
そのネクタイ野郎をちょいとつついてみると
ドミノは次々に倒れていく
パタパタと倒れていく音は遠くまで伸びて、どこまでも続いているようでいて
そうかと思うと、ぱたりとやんだ

この三又の分岐路、残りのふたつもつついてみる
過去にさかのぼる道はいつまでも鳴り止まず
遠のいていく音をいつまでもきいていた

前のめりに倒れているいくつものぼくをたどりながら
もどってきたところに
「遅かったじゃないか」と声をかけるぼくが一人
ぼくは何も言わずにそいつつく
パタリと音を残して倒れた

ぼくはそろりと3mずれてみて
そこからゆっくりと踏み出した
後ろには、またぼくがいた

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