悲しみの歌 遠藤周作

ぼくは、人を殺したことがなくて
それでも、おまえなんか死んでしまえと思うことはよくあって
かといって、苦しむ顔は見たくなくて
悲鳴も聞きたくなくて
無残な死体なんか絶対見たくなくて

犯罪、理性、そんなものがぼくを押しとどめているわけでもなくて
ただ、ただ臆病なだけなのかもしれず
いっそのこと、シュッポッと消えてくれればいいのにと
おまえなんか消えてしまえと思うことはよくあることで

子供の頃は、とんぼの羽を両端にひっぱって
二つに裂かれて出てきた筋肉を
駆っていたカマキリに食べさせたりしていたことは
今じゃ、恐ろしくてとてもできそうにない

生と死にはできれば出会いたくないもので
そんなことも考えられる頭だけが進歩して
ますます臆病になる

やっぱり説教くさい遠藤周作は
何を思えばよい
そんな本だ
頭が重い

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