笑う月 安部公房

ビデオを返しビデオ屋へ
自動ドアが開かなかった
慌てて、中から店員がかけより、ガラス越しに立ちはだかる
ドアは開くのだ

そのまま本屋へ
自動ドアが開かなかった
背後に早くしてくれよと人の気配
順番を譲る
ドアは開くのだ

自動ドアが開かなかったときの対処方をぼくは心得ていなかった
そして、次回、どうすべきかを学べたかというと、そうでもない

本屋で「笑う月」を買った

この本の中に「箱男」のテーマが書かれている

安部公房のメモ、新聞記事からの抜粋
二人の浮浪者の話

自殺したがっているアル中の訴えを聞いて
仲間の浮浪者が首をくくるのを手伝ってあげる
発見されたとき仲間は近くの石に腰をおろして泣いていた
警察の尋問に対して「待っていた」と答える
「何を待っていた」と聞かれても答えることはできない

このメモの記憶が数年後に「箱男」になったそうな

はて?、はて?

こんなところにテーマが隠されていたのかと納得するどころか
ますます、わからない

目的地は、三軒茶屋グレープフルーツムーン
行き帰りの電車の中
ぼくは、安部公房の頭の中を、はて?はて?と考える

目的地で聴く、さらりとした音楽はさらりと流れていってしまった

駅の自動改札
ゲートは閉じられた
乗り越し清算を忘れていた
ぼくの背後に迫る順番待ち
「くそっ」っと言い残してどこかに消えた

「くそっ」だけが耳に残る

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