夏休み2

家をぐるりと取り囲む縁側を伝ったところに汲み取り式の便所があって
夜になると、縁側は真っ暗で裸電球がぶら下がる便所は
この世でもっとも不気味な空間で

そんなところに行くならと、寝小便をたれた
ばぁちゃんはさんざん説教をたれるので
縁側から庭先に立小便をする
植木が枯れたと、今度はじぃちゃんが説教をたれる

ぼくは親指を吸う癖が直らなくて
親指は腐りかけていた
寝ている間にばぁちゃんは親指に辛子をぬった
「反対の手を吸いよるよ」と反対にも塗られて
ぼくの癖は直った

ばぁちゃんの家に風呂はなく
道後温泉に行く
自分は男だと分かってはいたけれど
ばぁちゃんと一緒に女湯に入った
若いねーちゃんにはちろちろと目が行くけれど
ばぁちゃんには気づかれないようにしていた

夏目漱石など知るわけもないけれど
「坊ちゃん」で有名な温泉だと知っていて
坊ちゃん団子は不気味な色合いで
我慢して飲み込んだ

風呂上りに飲むヨーグルト味の牛乳は絶妙で
フルーツ牛乳でもなく、ヤクルトでもなく
そこでしか味わえなかった
牛乳のキャップを集めるのが流行っていて
持って帰るとみんなが欲しがった
見せびらかして、自慢して
誰にもわたさないいやなやつだった

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