外人さんがやってきた
日本語をしゃべってくれる外国人
外国人のはなす日本語は、どこか滑稽で親しみが持てる
そして、いい人だと思いこませてくれる
今日の外人さんは違う
ずいぶん前の夏の日も、この人はやってきた
クーラが壊れていた
録音ブースはサウナのようになっている
ぼくはこまめにブースの重たいドアを開けて喚起にせいをだす
その日は何人もの外国人が入れ替わり立ち代り
ぼくは平謝りを繰り返す
「だいじょうぶです」とたどたどしい日本語
汗が止まらないのに笑顔を返してくれる
さて、この人だけは違った
流れる汗にも表情は冷淡
ぼくの平謝りは届いていない、夏だというのに寒気がする
悪状況の中でも仕事は完璧にこなす
プライドの壁で塗り固められた様相も、美人ときたら非の打ち所がない
「どういうスタジオよ」とはき捨てるように帰っていた、日本語も完璧
ぼくは完敗
そして、今日
スマート、スピーディー、パーフェクト、あっという間に帰っていった
今日のぼくは負けてはいない、クールに仕事をこなす
ドローってとこだろう
お客と張り合ってどうすんだと思いつつも、意地になる