黄桃、白桃

その人はオレンジ色な人だと、勝手に思い込んでいる
いつの間にかオレンジが一番好きな色になった

大学4年の春、花見をした
久しぶりにたくさん集まった
スタジオとバイトに明け暮れていたぼくは、開放された気分
酒の味もわからないくせにがばがば飲んだ

日が暮れると、そのままぼくのアパートになだれ込む
ぼくは気持ち悪くて便所で吐いた
便所の水は真っ赤になっていた

しばらくはバカ話にまぎれていたものの、吐き気はいっこうにおさまらず
気持ち悪いから寝る、とみんなをおいだした

やっと一人になれた、寝ればすっきりするだろうと、布団にもぐりこんでみたけれど
吐き気はおそってくる、そのたびに便所の水は真っ赤になっている
もうどれくらい吐いたのだろうと、考える能力もうせて意識は遠くのほうに
もう便所まで歩けない

いつの間にかオレンジな人はベッドのそでにいた
桃の缶詰、とぼくは言う
買ってきてくれた桃缶
桃缶はオレンジでなくて白桃でないとだめなのだと
みょうないいがかりをつけながら、ほおばる
それでも、しばらくすると、吐き出してしまう

救急車がぼくのアパートの前で止まった
大学生、急性アル中、お決まりのパターン
仕事モードな人に囲まれてぼくは病院に運ばれた

手術台に乗せられたぼくは人にとり囲まれて
たくさんのチューブを口の中に入れられて
胃の中をぐちゃぐちゃと引っ掻き回されている
あまりの苦しさに、チューブを抜いてくれと言おうとしたところでしゃべれるわけもなく
このままでは殺されると、無抵抗なままに思っている

なんとか生き延びて、病室のベッド
右手に点滴、左手に刺さるチューブの先には血液がぶら下がっている
ろくに寝ていない、意識ももうろう
やっと寝れるとほっとしたところに、友達の構えるカメラのフラッシュが光った

ぼくは大量の血液を吐いていた
ぼくの胃は50代のポンコツな胃だと言われた
普段、酒は飲まないくせに
たばことコーヒーと外食と徹夜、不規則、不摂生
ちょっとはしゃいでみたら、血を噴いた

血液の減ってしまった体では歩くこともできない
救急車を呼ぶ頭も働かない
そのままどこかにいってしまう

いまでは、オレンジの桃缶

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