夏休み3

道後を離れて、今となってはいったいそこがどこだったのか
車でずいぶんと離れた場所にぼくと、ねぇちゃんは搬送されて
着いた先では
パパとこのじぃちゃんと、ママとこのじぃちゃんと、どっちが好きか
という問いに迫られて
本心では、こんな狭苦しい家、大嫌いじゃと思いながらも
「ママとこ」と答えざるを得ない雰囲気を、子供ながらに察知して

ぼくはお茶漬けが大好きで
かーさんにお茶漬けが食べたいというと
そんな栄養のないものと、ひどく怒るのだ

じぃちゃんは飯を食う
茶碗によそわれた米、じょぼじょぼとお湯を注ぐ
じゅりじゅりと音を立ててすする
下品、はしたないという言葉の意味を理解して
かーさんは毎日これを見て育ったのだ

ときに現れる、かーさんのにぃーさん、ぼくの叔父にあたる人は
話すことが、ぼくにはさっぱりわからなくて
ばぁちゃんが間に入ってくれるのだけれども
衝撃はとてつもなく
あわれみ、同情、差別意識など理解しないぼくの中に
得体の知れぬ感情が溢れ出すのに戸惑うばかりで
障害者のおじさんと、かーさんの育った家
ぼくは早く道後のばぁちゃん家に戻りたくなる
かーさんは何も言わない、ぼくは何も聞けない

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