電車の中

あまり電車に乗らなくなったぼくは
たまにつかってみると、自動改札で切符を取り忘れたのも気づかずに
降りるまぎわにあたふたする

本の中にどっぷりのめりこんで、気がつくといったいどこなんだと
見知らぬ景色の中に取り残される

ホームと反対側の扉がひらくと、どれほどの人間が線路に投げ出されるのか
一度間違えてもらいたい

あまりにも暇なので、次々と通過していく電信柱を目で追ってみたり
慣れてくると今度は線路に目を向け枕木に挑戦してみる、目はぎょろぎょろ動くものだ

凍えるような寒さの中では、太ももの下から伝わるシートのぬくもり、どんな暖房器具よりも心地よい
特急の通過待ちは耐えられない、誰か扉を閉めてくれないかと思う

おやじの生ぬるい息にぞっとする一方で、この車両の中なら誰となら付き合ってもいいかと
勝手に想像を膨らませ、女の人をぶっしょくしたりする

くだらない雑誌広告の見出しを読んでみたり、クイズを発見するとまじめに取り組んでいる

何気なく携帯電話を手にするも、見渡すと携帯に見入る人の多さにあきれる
ぼくはあんな人達と同じになりたくないと、ポケットにしまう

車内放送の声が女の人だと、どんな人だろうと想像してみたり

つり革に生ぬるいのが残っていると、すかさず隣のに持ちかえる
本のページをめくるわずかな合間に、つり革を奪われてむっとする

すいた車両に乗りこむと、ゲロの上に新聞紙、ここで逃げてはただの人と思うも、やっぱり耐えられない
大また開きでシートを占領するこわおもて、ここで逃げてはただの人と思うも、やっぱり座らない

東海道線、藤沢過ぎれば座席で弁当を食ってもいいような気になる

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