海ゆかば

ソプラノの女の人と、バリトンの男の人がやってきて
今日は歌を録音した
「この道」「七つの子」「赤い靴」、、

見物人も多く、じいさん、ばぁさんがぞろりとソファーに寄り添って
懐かしい曲と美しい歌声に酔いしれる

田舎からはるばると
「今朝、とれたてのきゅうり」とビニール袋を取り出して
「トマトもあるわよ」とビニール袋がでてくる
妙な、差し入れ

「海ゆかば」
ぼくには聞き覚えのない曲に
それまでいじょうの反応で盛り上がる

うみ ゆかば みづく かばね
やま ゆかば くさむす かばね
おおきみの べにこそ しなめ
かえりみはせじ

「卒業式はこの歌よ、蛍の光は外国の歌だから、歌っちゃいけなかったのよ」

海をゆくなら
水に漬かる屍ともならう
山をゆくなら
草の生える屍ともならう
天皇のおそばに
この命を投げ出して
悔ひはないのだ
けつして
ふりかへることはないだらう

ぼくは、さっきまで、あちこちで議論されている靖国問題をネットで読みあさり
ふと、じいさん、ばぁさんのもってきた、きゅうりとトマトを思い出す
この人たちにはとうてい追いつけない

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