ぼくはあるとき、兎を飼うことにした
特に小さいというわけでもない黒い兎
チビと名前をつけた
小屋をつくった
毎日、キャベツをあげて、人参をあげた
ときに、掃除もした
それなのにチビはぼくになつかなかった
手を差し出すと、指をかんだ
血がにじんでも、ぼくは怒らなかった
ある朝、チビはぐったりとしていた
医者にみせると、栄養失調だといわれた
毎日、キャベツをあげて、人参をあげていたのに
その夜、チビを枕元に一緒に眠った
次の日、チビは死んだ
ぼくはそのころ、日曜日には教会に通った
賛美歌を歌ったけれども、聖書は難しくてよくわからなかった
初めて熱心にお祈りをした
涙を見せれば、神様も同情してくれるかと、泣いてみた
現れたのは、なぜだか、お釈迦様だった
結局、チビは生き返らなかった
ある日、チビをみかけた
チビは元気に飛び回っていた
「チビ」と声のするほうに、母と娘、幸せそうな親子が手招きをする
チビはうれしそうにかけていった