もう夜も明けて、空が白みがかる頃に
とっくに睡魔も通り越して
疲れにどっぷり浸りながらも、やっとこ開放された思いで
気分は少し軽やかで、家に帰ったらたっぷり寝てやろうと
家路の車を運転しているところに
道路のセンターラインをトイレットペーパーのように
くるくると巻き取っているやつがいて
ゆっくりと車を近寄せてみたところで
目もくれない
車のタイヤを乗っけてセンターラインをたどるのが楽しみなのだ
そんなものを巻き取ってどうするつもりなのだと言うと
ようやくこちらに視線を預けたかと思うと
やっぱりトイレットペーパーにするのだと言う
あげくに
対向車がきみと同じようにタイヤをセンターラインにたどらせてきたらどうなるさ
衝突だよ
きみと同じことを思うやつはごまんといる
センターラインががトイレットペーパになるなんて誰が思う
その点ではぼくのほうがきみよりも勝っている
そこまで言うつもりはないけれども
それにしてもきみはつまらない
巻き取ったセンターラインを左手に絡ませて
顔に似合わず流暢な口ぶりに
黄色のラインを選ぶのはナンセンスだとぼくは思ったけれども
それはそれできみにあっているのかもと
ぼくはのろのろと車を走らせて
センターラインのなくなった道路に
家までの道のりは果てしなく思えた