コップを倒した
こぼれた水がどんどん絨毯に吸い込まれていく
吸いこまれる様をもう一度、見てみたい
コップに水を汲んできて同じ場所に注いでみる
もう一杯と、台所で水を汲んできては
茶の間のテレビの前に位置する、すでに大きな円を描いて変色した場所にゆっくりと注ぎ込む
飽きるまで、何度も繰り返した
次第に沸いてきた、絨毯にどれだけの水が入るのかという興味
水を汲む回数はさらに伸びた
おそらく下は畳、その底無しな許容量にぼくの興味もついに失せた
買い物から帰った母親はすごいけんまくでぼくを問い詰める、何杯やったのと
覚えていないじゃすまされない感じ、少なめな方が事を荒立てない感じ、3杯と
その後のどんな尋問にも、ぼくは3杯を貫き通す