会社で新たに電話回線を増やすそうで
光電話が今はお得と、どこからともなく入り込んできた情報に
「今から、申し込もうと思うのだけど、私らには少し難しくて
わからないことがあれば、代わるので、よろしく」と
ぼくをそばに置いて、問い合わせにダイヤルする
やっとおけと命令すればいいのに
時代の流れになんとかぶら下がっているおじさん連中にぼくはめっぽう冷たく
そんな人たちが、突然、たとえばプライマルスクリームなんて言葉を発すると、げんなりする
あなたは社長なんだからと思いながらも
必死にぶら下がる手を払いのけたくなる欲望に
ぼくがやっておきますよなどと決して言わない
相手が要領を得ないのか
社長がとんちんかんなことを言ってるのか
そんなことはよそに、ぼくは今日のレコーディングのセッテイング
回線を頭の中で組んでいた
もうずいぶんと長い間、電話は保留にされているようで
社長の表情は渋くなっている
近頃は保留音もあまりきくことがない
「あら、こんばんは」と相手のおかぁさんととりとめのない挨拶を交わして
「ちょっとまってね」と保留音に切り替わる
30秒ほどで曲はループし、2順目にはいったころに
「もしもし」と
その間がぼくはとてもなつかしく
社長の表情は受話器を当てたままさらに渋くなって
いったいどんな音を聞かされているのだろう
プライマルスクリーム
セッテイングがあるのでとぼくは席を離れた