そろそろ大学2年も終わる頃
専門学校も卒業まぢか
たいした進歩もないまま
専門学校のセミナーへ毎週、藤沢から小田急線にのって、千駄ヶ谷まで通った
立ち止まっては、見上げたビクター犬
ばかでかい四角の建物、ビクター青山スタジオ
この中にはサザンオールスターズがいるのだ
いつかもぐりこんでやろうと
なんとなしに、さりげなく、つかつかと入ってみた
働きたいと言ってみる、追い出された
次のセミナーの日、履歴書置いてきた
次のセミナーの日、またのぞいてみる
えらい人出てきました、何やらえらそうなこと言われてやっぱり追い返された
ぼくは、この頃スケジュールがごちゃごちゃしてきたので手帳を持ち歩いていた
小さなノート、表紙に黒マッキ-で「極秘手帳」
このえらそうな人の名詞がぺたりと貼り付けられ、復讐してやると記されている
1週間ほどして、ビクタースタジオから電話がかかってきた
アルバイト採用された
復讐取り消しとは記されていない
何を言われたかまったく覚えていないけど、やっぱり根に持っていた
ぼくは、毎日千駄ヶ谷に通うようになった、お金もちゃんともらえた
毎日電話番、1時間以上かけて出向いていっては
「ビクタースタジオでございます」をくりかえす
刺激といえば、「原と申しますが、401の桑田をおねがいします」という電話にびびるぐらい
飽き飽きしていた頃、スタジオにぼく宛の電話がかかってきた
専門学校のセミナーでやってきたエンジニアの人
この人がぼくの最初の師匠(弟子だと思っていてくれているかは疑問)
かれこれ10年以上会っていない
当時のぼくの言動、なかなか会わす顔がない
近頃、ぼくはマスタリングの仕事もぽつぽつとやってくるようになった
そんな中に師匠の録音、ミックスの音源がやってきた
やっぱりすげ-音、ぼくなんかが手を加えていいものかと
recorded and mixed by Mitsumasa Aono
mastered by Shinya Aono
こんなクレジットのはいったCDが存在する
偶然にも名字が同じ、名前が同じだから目をつけられた
ぼくは成長しましたでしょうかと問うてみたくなる
話は過去へ
この電話で、あっさりとビクタースタジオを後にして
スタジオをあちらこちらと金魚の糞のように引っ付いて回る機材持ちに
すでに大学3年
にしてもよく単位が取れたものだ